ある女性が不本意な妊娠をしてしまった。子供は欲しくなかったため、悩んだ末に駅のコインロッカーの中に生まれたばかりの自分の胎児を閉じ込め、見つかりにくくするために鍵をかけて、その鍵を公園のゴミ箱に捨てた。
それからしばらくは、罪の意識にさいなまれながらも隠れるように生活し、例のコインロッカーには近づかないようにしていた。
しかし、5年の月日が経ったある日、女性は出張の帰りに無意識のうちにそのコインロッカーの前を通ってしまう。するとそこには、5才ほどの男の子が一人で立っていた。
「ねぇ、ぼくどうしたの?」
女性は声をかけた。しかし、男の子は答えない。
「どこから来たの?」
それでも答えは返ってこない。
「ねぇ、お母さんとかはいるの?」
「お前だ!!!!」
コインロッカーに胎児を放置したという事件は度々耳にします。日本で最初の事件は1970(昭和45)年2月、渋谷の東急百貨店西館1階に設置してあったコインロッカーで起こったものです。駅のコインロッカーとしては同年7月、浅草駅にて起こりました。この頃から毎年のように、コインロッカーで胎児が発見されるという痛ましい事件が相次ぎました。
きっとこの怪談話も、この時代に生み出されたのではないでしょうか。