街中でよく目にする、手をつないだ一組の親子が描かれている道路標識。この標識は、歩行者専用の道路が存在することを意味するのだが、そのデザインにはある恐ろしい秘密が隠されている。
それは今から数十年前、あるカメラマンの男性が公園で遊んでいる子供達の姿を写真に収めていた時のこと。その中で男性は、ソフト帽をかぶった父親と女の子が手をつないで歩いている姿を見かける。彼はその仲むつまじい姿に思わずシャッターを押した。
ちょうどその頃、政府が新たに「歩行者専用道路」の標識を制定しようと、広く一般からそのデザインを募集していた。それを知った彼は、公園で撮影したあの手をつないだ親子の写真を、デザイン原案として応募したのである。すると、これが見事に採用となり、図案化されて現在の歩行者専用道路の標識となったのだ。
ところが、それから数ヵ月後の朝、自宅で新聞を読んでいた男性は、ある記事を見て背筋が凍りつく。それは、少女誘拐殺人事件の犯人が逮捕されたというもので、そこに載っていた犯人の男と殺害された少女は、まぎれもなく、男性が応募した写真に写っていた手をつないだ親子だったのだ。
そう、標識に描かれている「手をつないでいる親子」は、実は親子などではなく、誘拐犯の男が少女を連れ去ろうとしている姿だったのである。
都市伝説の解説
ヨーロッパの標識デザインを採用した
この「歩行者専用道路標識」のデザインは、1968年にウィーンで開催された「国連道路交通会議」において採択されたもので、ヨーロッパ各国における道路標識の国際統一規格となっています。日本の「歩行者専用道路標識」も、この規格に準じたデザインになっているため、今回の「都市伝説」は誤ったものであるといえるでしょう。また、日本においては、道路標識のデザインを一般公募するようなことは一切行っていないそうです。
ドイツの大統領の発言が原因
なぜ、このような噂が生まれたのかというと、1970年頃に西ドイツのグスタフ・ハイネマン大統領が、自国で用いられていたこの標識のデザインに対し「誘拐犯を連想させる」と発言し、この発言から標識の男がまるで誘拐犯であるかのように誤解されたことが原因のようです。それ故に、この「歩行者専用道路標識」に関する「都市伝説」は、海外でも多く語られているのです。
ドイツの標識は男性ではなく女性
ちなみに、ドイツの「歩行者専用」道路標識は、グスタフ・ハイネマン大統領の発言によってデザインが変更されたため、女性と子供が手をつないでいるものになっています。「誘拐犯=男性」というイメージはどうしてもつきまとってしまうのですね。