世の中には、あまり知られていない闇のアルバイトというものが存在する。そういったものの多くは誰もやりたがらない内容のゆえ、高収入である場合が多い。そして、その中で最も代表的といえるのが「死体洗いのアルバイト」である。
大学の医学部では、その養成カリキュラムの中に遺体解剖実習と呼ばれるものが必ず組み込まれている。その際、解剖に使われる献体は事前に洗浄しておく必要があるのだが、これをアルバイトに行わせているのだ。アルバイトは医学部の学生を中心に募り、時給は1万円ほどだという。
毎回、その収入を目当てに多くの学生が志願するのだが、死体をホルマリンのプールに浸けてゴム手袋で擦るという作業や、死体やホルマリンから発する強烈な臭いに耐え切れず、途中で逃げ出す者も少なくないのだ。
都市伝説の解説
アルバイトに献体を扱わせることはない
よく語られる定番中の「都市伝説」ですが、実際には「死体解剖保存法」や「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」などにより、解剖用遺体の取り扱いには厳しい制限が設けられているため、アルバイトに献体を扱わせることはないようです。また、ホルマリンに関しても、ホルマリン中毒の観点から取り扱いが厳しく制限されており、「ホルマリンプール」のようなものは存在せず、解剖実習中においてはホルマリンではなくフェノールなどを振り掛けるのが一般的であるようです。
小説がきっかけで広まった
以上のことから、この「都市伝説」はウソであるといえますが、なぜこのような噂が広まったのでしょうか?その理由の一つが、大江健三郎の小説「死者の奢り」(1957年)であるとされています。この作品の中で、死体を処理するアルバイトが登場しており、それが今回のような「死体洗いのアルバイト」の噂を生み出したのではないかといわれているのです。
遺体を洗うアルバイトは存在する
ちなみに、解剖用ではない遺体を洗うアルバイトは実在します。それは、葬式などで行われる「湯灌」と呼ばれるもので、解剖用の遺体とは異なり、厳しい制限は設けられていないため、実際にアルバイトが遺体に触れることもあるようです。(日給1万円~2万円程度)