女子大生のA子とB子は、テニスサークルの合宿が行われる軽井沢へと車で向かっていた。二人は企画係ということもあり、他のメンバーよりも早めに、宿泊するペンションに行く必要があったのだ。
車がペンションの近くに差し掛かった時、検問が行われていて、車に近寄ってきた警察官は二人にこう注意した。
「最近ここらへんで男の通り魔による殺人事件が起きたばかりで、犯人はまだ捕まってないから十分に気をつけて下さいね」
その後、二人は山のふもとにあるペンションに到着し、運んできた器材を車から積み降ろした後、部屋のベッドの上に腰掛けてひと休みすることにした。
B子が今晩のレクリエーションのことや、他のメンバーがいつ頃やって来るのかについて話をしていると、鏡を見て髪の毛をいじっていたA子が急に、「今から夕食の準備をしようか」と言い出した。「でも、まだ早すぎるんじゃないの?」とB子が言ったが、A子は「いいから早く手伝って!」と、B子の袖をつかんで強引に部屋の外へと連れ出した。「そもそも材料もまだ買ってないのにどうするのよ?」B子が話しかけても、A子はそのまま黙ってペンションの外まで引きずり出した。「A子、いったいどうしたの!?」B子が声を荒げて尋ねるとA子は顔をこわばらせてこう言った。
「さっき鏡を見ていたらあの部屋のベッドの下に変な男が映ってたのよ!きっとあいつが警察の人が言っていた通り魔なんだわ!」
全国的に有名な「ベッドの下の男」シリーズです。
この話には様々なパターンが存在し、今回は二人とも助かりましたが、ある時には片方が殺されてしまうという場合もあります。また、発生現場もアパートの部屋であったり、海外のホテルであったりと、色々と異なるようです。
この話における二人の生死を分けるポイントは、ベッドの下に潜む変質者にどちらか片方が気づけるかどうかです。気がつくことができた場合は、適当なことを言いながら部屋を抜け出し、無事生還することができますが、気がつけない場合は、片方が帰宅した翌日にもう片方の人が死体で発見されることがあります。
実際にこのような事件が起こったという記録はありませんが、あまりにリアリティの高い内容のため、信じている人も多いようです。
ちなみに、日本の鎌倉時代の説話集「古今著聞集」にも、旅人が通りがかりの空き家に泊まったところ、室内に鬼が潜んでいることに感づき、それとなく外に停めてある馬の様子を見に行くふりをして難を逃れるという、類似の説話が存在します。もし、その話が変化して今日の内容になったのであれば、もの凄く歴史のある都市伝説になりますね。